【第2回大藪春彦新人賞作品】 愚か者の身分読破👔

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コムデギャルソン、マルタン•マルジェラなどを好む登場人物をはじめ、ファッション好きと思われる記述が多々ある『愚か者の身分』。

気になって作者の西尾潤さんを調べてみると、本の表紙と同じ色の髪をした個性的な女性だった。

大阪出身の東京在住。年齢は非公表となっているが、インタビュー記事やTwitterにあげられた写真を見る限り30代前半に見える。そしてとにかくオシャレな方だ。それもそのはずでヘアメイク、スタイリストとして働く傍ら執筆していたようだ。

『愚か者の身分』が第二回大藪春彦新人賞を受賞し、小説家としてデビューした。最初はこの表紙に目を引かれ手にとり、帯に目を通した。そしてパラパラと数ページ読み進める。

直感でオシャレ感漂う小説だと感じた。実際、どこかコミカルでありながら、スタイリッシュな文体は読みやすい。なんだろう、ジャジーなヒップホップを聴いてる感覚に近いかも。心地よいというか。

扱うテーマは半グレの下につく者たちの戸籍ビジネス。SNSを駆使して、対象を絞り込んで戸籍の売買巡り裏切りやお金のトラブルに発展するクライムモノなのだが、登場人物の底抜けたキャラが全体を明るくしている。それぞれ視点を変えながら、それぞれの事情、それぞれの思いを描き、時に交錯していく。

戸籍売買に手を染めるきっかけや足を洗いたい人、はたまた戸籍を売ってしまった人の寂しさなど、基本閉塞感の伴う話のはずが暗くならずに読める。

考えてみるとそうかもしれない。ファッション好き、服好きの人特有なのか、そういう人達って後悔を感じさせない生き方をしているように思う。楽観的と言ってしまえばそうなのだが、どこか人生を楽しんでる感じがする。

職場の後輩にもとんでもない服好きがいるが、張り込みをするのになぜかバルマンの20万円のコートを着て現れたりする。

安月給なのによくそんな高いの買うな、それが俺の感想だ。後輩に言わせると10年着ればすごく安い買い物です、となるのだが。雨に濡れるのを嫌い、何度も肩のあたりのゴミを払ってニコニコと幸せそうだった。そういう時の後輩はすごくいい顔してる。

そういう空気感のある作品。面白いのでオススメです!