誉田哲也最新作ミステリー小説【もう、聞こえない】感想!いよいよ発売

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「女の人の声が聞こえるんです」 
殺人の罪を認め、素直に聴取に応じていた被疑者が呟いた。
これは要精神鑑定案件か、それともーー。

 

身元不明の男性が殺害された。

加害者が自ら一一〇番通報し、自首に近い形で逮捕される。これで、一件落着。

自分の出る幕はない、と警部補・武脇元は思っていたが……。

事件の真相に、あなたは辿り着くことができるか。

伏線に次ぐ伏線が織りなす衝撃のミステリー。

 

【刑事小説】背中の蜘蛛・まるでエドワードスノーデン事件の世界 

 

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こちらは誉田哲也さんの最新作『もう、聞こえない』の説明書きだ。誉田さんと言えば『ストロベリーナイト』をはじめ、数多くの傑作である警察小説があるが、何気にホラーテイストや物の怪テイストの作風も得意とされている。例えば『妖の華』だったり『妖の掟』だったりは人の血を飲んで生きる種族の話だが面白い。ネタバレがない程度に言えば今回は人智を超えたいわゆる〝霊〟のような存在が警察小説に盛り込まれている。

 

ある意味、よくある設定ではあるが〝聞こえてはいけないはずの声が聞こえる〟というやつ。声を届ける側の物語、声を受け取る側の物語が異例のコンビ物の推理小説としてテンポよく書かれている。

声を届ける側も受け取る側も週刊誌の記者。過去の事件の真実を託されるように取材から次の取材へと繋がっていく。そして、少しずつ交わるはずのない2人は心を通わせていくところもひとつの醍醐味だと思う。1人では掘り起こせなかった事件や、乗り越えられなかったであろう事柄をコンビで超えていく。よくある設定とはいえ真正面から泣かせにくる物語だ。実際、物語の佳境では何度も目を潤ませてしまった。

 

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いずれにせよ、この方の文章や起承転結は俺にとって心地よい音楽と似たような感覚で、それこそどの作品を読んでも感動しているが。不思議な事にどの作品を読んでも心地よく読めるのだ。

人が持つ〝思い〟が交錯した事件の描き方も相変わらず面白い。異例なコンビであるがゆえのクスリと笑ってしまうユーモアもある。何らかの形で続編があっても面白いと思える作品だ。

 

『小説幻冬』で連載されていた『もう、聞こえない』の単行本は8月26日いよいよ発売される。