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【オススメ小説新刊】だまされ屋さん ・ 星野智幸読破!さすが日本文学会のファンタジスタ!

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星野智幸氏は1965年、アメリカロサンゼルス市生まれ。早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務という経歴を持つ。星野智幸氏で俺がこれまで読んだのは『夜は終わらない』と『呪文』。そして新刊の『だまされ屋さん』だ。

星野智幸氏の作品は不思議な世界観を持ちながらも圧倒的なリアリティーを突き付けられる。

呪文

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近年問題になっているシャッター商店街の町興しを若きリーダーが行う。ここだけを聞くとよくある話だと思いがちだし、新聞社勤務で培った社会問題を切り口にしてるのかと想像したが、ページを開くたびに不思議な物語が表情をガラリと変えるので夢中になっていた。

物語の始まりは食べブロガーがリーダーの飲食店をクレーム攻撃をし若きリーダーが撃退するところから始まる。それを皮切りにカリスマ性で持って人を動員し続け、商店街の大改革を行うのだが……。

読んでいただければわかるが、表の顔裏の顔ならぬ表向きの言葉、裏向きの言葉、とでも言えばいいか、とにかく各登場人物のセリフが物語を牽引していく。セリフを通して少しずつ真意が浮き彫りになるが、完全な形では姿を現さない。まさに言葉の持つ力「呪文」というタイトルがぴったり。とにかく読んだら止まらなくなる事必至の良書だ。

夜は終わらない

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『生きてる意味があることを証明しないと。ね? 私が夢中になれるようなお話をしてよ』主人公はセックスや結婚を餌に男を惑わし、財産を巻き上げ、証拠を残さずコロシを続ける玲緒奈。実話でも創作でも夢中になれる物語を紡いでいるうちは玲緒奈はコロシをしない。この“癖”があるため、ただの金目当ての犯行と言い切れなくなっている。

資産を奪われたデイトレーダーの春秋や文房具会社社員の久音との会話で物語が進んでいくのだが、もう、天才としか言いようのない“会話力”で終始圧倒される。玲緒奈と男たちの会話に惹き込まれ、途中で読むのを中断できずに2日かけて読みきった作品。言わずもがな寝不足で仕事中はフラフラだったが、早くまとまった時間をとって読みたい、と常に思っていたほどだ。

だまされ屋さん

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なんとなくだが、最初のタイトルを見たときは巷にいる『殴られ屋』の騙されるバージョンか? 騙されに行って騙されきるみたいな? なんて思ったりはしたのだが、もちろんそんな単純な話ではなかった。

これまた深い人間模様が描かれている1冊だった。夫を亡くして公団住宅に一人暮らしの夏川秋代のもとに、ある日、「(長女の巴と)家族になろうとしている」と若い男が突然やってくる。

昨今のアポ電強盗やオレオレ詐欺などを彷彿させるストーリーから物語は始まるのだが、疑いながらも当事者があえて騙された上で関係性を構築していく。もっと言うと蓋を開ければ騙してはいないのだが。

闖入者が登場人物の夏川秋代、長女の巴、長男の優志、次男の春好、そしてその子供や奥さんなどを含めた家族間で会話することで深く掘り下げていく。星野氏の十八番である会話劇だ。それも高度な。それから、新しい家族の形やあり方の展望とも取れる物語だった。

 

俺自身、シングルマザーのちゃま、長女はむはむ、次女ぽってりの家族が生活しているところに現れた“闖入者”であるゆえか、なんとなく“闖入者”の気持ちがよくわかる。何事においても冷静なのだ。もちろんそれは悪い意味ではなく。だから俯瞰で家族を見られるという部分はあると思う。そして、闖入者であるからこそ会話が大事になるのだが、ちゃまとは会話不足で喧嘩になることもしばしば……。仲直りできてるからある意味この物語のようだが。

先日、こんな事もあった。ぽってりの保育園が公園で行われ、その応援に行った時の事だ。運動会が終わって園児たちが公園の遊具で自由に遊ぶことになった。ちゃまは他の保護者と話に夢中になっていて、流れで公園内で友達と鬼ごっこをするぽってりたちを見守る役目になった。

鬼から逃げて、走り込んできたぽってりが飛びこんで抱きついてきたので、抱き上げると、それを見ていた友達の女の子がこう尋ねた。「ぽってりのパパ?」4歳や5歳の子供に説明するのは難しいな、と思いながら「うーん、そうだね」と答えようとしていた。すると、ぽってりが「パパじゃないよ、友達」と言ったのだ。普段会話がなく、この一言だけ聞いたらショックなのかもしれない。ただ、ぽってりが俺の事を好きでいてくれてるのは普段の会話でわかっている。このわかっているって感覚が根底にないと、“言葉”というのはフワフワと色々な意味を持ち、それに振り回されてしまうんだな、と改めて思った。「そうだね。友達だ」とそう言いぽってりの頭を撫でるとニッコリ笑っていた。

 

話がそれてしまったが『だまされ屋さん』、星野智幸氏の類まれなる文章力、会話力らは必見なのでマジオススメです!

 

 

 

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