【感想】東京貧困女子から学ぶ、日本で貧困に陥るきっかけとは?

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日本において貧困とはほとんどの場合が「相対的貧困を指して言われる。一方、食べ物がない、家もない、最低限の生存条件を欠くような状態を「絶対的貧困と言うが、貧困の定義にも2種類あるのだ。

相対的貧困とは……?

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今回は「相対的貧困」に関して。日本で言う貧困とはどのラインを指して呼ばれるのか。等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない場合、“貧困層”という事になる。

平成28年の国民調査意識によると、平成27年の中央値は244万円。その半分の122万円が貧困ラインとなる。簡単に言えば単身者で社会保障や税金を支払って自由に使えるお金が122万円以下の場合だ。月額約10万円、家賃や携帯代などを考えればとてもじゃないが10万円じゃきかない……。これが2人世帯だと200万円以下、4人世帯だと250万円以下となる。平成28年では貧困率は前年より回復傾向にあったものの、現状のコロナ禍を踏まえれば統計をとるまでもなく増加傾向になる事は火を見るより明らか。

 

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自分ごとで言えば、月額で言うと1割から、ひどい月になると2割ほど収入が落ち込んでいる。そして今もそれは続いている。もちろん個人事業主持続化給付金などもあるが、絶妙に対象にならない程度の落ち込みでそちらは断念。色々と奔走しているというのが現状である。今の自分の状況を4人世帯と仮定した場合、250万円が貧困ラインとなる。俺が派手にすっころべばすぐに到達してしまうラインに思われる……。そんな不安と隣合わせの生活の中、1冊の著書が目に留まりタイトルで即購入した。

東京貧困女子

20年以上、AV女優や風俗、介護をはじめ貧困という社会問題の取材・執筆を行っているノンフィクションライター中村淳彦氏の連載を1冊にまとめたものだ。副題に『彼女たちはなぜ躓いたのか』とあるが、そこにあるインタビューには“普通の幸せ”をただ、ただ追ってきた女性の人生ばかりだった。

 

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第1章『人生にピリオドを打ちたい』

本来、希望に溢れ夢を語っていてもおかしくない東京の女子大生が“奨学金”に躓いてしまう。複数の女子大生から話を聞いているが、家庭環境の問題を抱えている子など個人差はあるが一様に“奨学金”に悩まされている。

俺は大学に行っていないが、ちょうどそのくらいの年齢の時は、クソ高いストリートブランドや当時はレコードの原盤を買うのが流行っていて、レコードを買い漁って、好き勝手生きていた年頃だ。

著書に登場する女子大生は医学生だったり、当時の俺よりよっぽど将来を見据えている子が多い。何かがおかしいと感じずにはいられない第1章だった。昔と違って遊んでいるだけでは大学生はつとまらず学業もおろそかにできないという。

そのためパパ活風俗産業で仕事をはじめ、お金を得てどうにかしようとしている。その結果、精神がすり減っていく。負のスパイラルへの入り口が書かれていた。これは女子大生だけでなく、男子大学生にも同じ事が言える。グレーな仕事へと手を染めていく入り口が“奨学金”となっているのだろう。

 

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第4章『あと1年半しか仕事ができない』

この章で特に印象に残ったのは、携帯電話販売員の佐伯百合さん(仮名)のインタビュー。清潔感のある可愛らしい女性だという佐伯さんは本当にごく普通の女性という印象を受けた。

一度は結婚生活という幸せを求め、結婚をするものの夫のDVとモラハラが原因で離婚。とはいえ、23歳に上京してから働き続けている佐伯さんはすぐに貧困という壁にぶつかる状況ではないように思える。佐伯さんの年収は当時300万円。

ではなぜ? と思うだろうが、彼女は上京してからずっと“非正規雇用”なのだ。正社員と非正規。もうそれだけで想像がついた通り、彼女も非正規としての苦痛を味わい続けてきた。

詳細は省くが、俺も非正規だからよくわかる。大半の正社員が俺ら非正規の人間が同じように笑ったり泣いたり喜んだりするのが想像できないのか、する気もないのかわからないが、無理難題から宣告なしの突然ギャラカットなど、非正規にいい話はひとつもない。何度殴りつけて終わらせてしまおうと考えたかわからない。とにかく生活基盤が脆いのだ。彼女もそう。現実にお金が足りないのはもちろんだが、その不安を払拭するために風俗で働き始めたのだと思う。選択肢のない状況だと“非正規”でも、と考えてしまいがちだが、これは大きな落とし穴。身動きとれなくなる前に動ける方は動くべきだと思う。俺も含めて。

 

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第6章『子どもの未来が消えていく』

この章では貧困家庭に触れているが、離婚後の女性やシングルマザーの生活の辛さを取り上げている。ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%と言われる。シングルマザー・ファザーの約半分は相対的貧困なのだ。平成28年の統計だと、ひとり親世

。じゃあ、彼ら彼女らが何か悪いことをしたのか、というとそうではない。むしろ普通に幸せになろうとしただけだ。

この6章では何とも言えない人生を歩まされている女性がいた。トップ私大卒でキャリア官僚の元夫人のインタビューで、もともとの世帯年収は2000万円。夫もキャリア官僚の富裕層だ。

そんな順風満帆の人生に影がさし始めたのは彼女の母親ががんになった事から。母親のために必死になった彼女は多額のお金を払い、できる事を何でもしようとした。その結果、家庭にヒビが入り始め最終的には離婚に至る。

紆余曲折を経てインタビュー時は知人の家の屋根裏部屋に住んでいるという状況になってしまっていた。インタビューを読む限り、特別何か彼女に落ち度があったとは思えない。

他にも結婚、出産、離婚を経て一人ですべてをやらなくてはならない女性たちの話が多々あった。悲しい話ではあるが読んでいると“結婚”をしたことで、貧困への引き金を引かれた女性がこの世にはたくさんいるという現実だった。

最後に……

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大学受験、就職、結婚。そのどれもが人生において真剣に向き合うタイミングだと思う。にもかかわらず、それをきっかけに足を滑らせてしまう人が多いのも事実。一度、滑らせて落下してしまうとセーフティネットの少ない日本では這い上がるのは本当に大変だろう。ただでさえ誘惑の多い東京では、いくら気をつけようとも足を滑らせてしまう事もある。

そうなると結局落とし穴を避けるのが唯一の策になってしまう。そんな消極策では一生一人になってしまうし、幸せとは思えない事もわかってはいる……。『東京貧困女子。』色々考えさせられるので、新刊ではないですが、ぜひオススメ。まず俺は250万円以下を割らないように頑張りつつ現状打破せねば……。